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ミズキ ゲジゲジ

総員玉砕せよ!

総員玉砕せよ! 総員玉砕せよ!

水木せんせいの戦記物は、たくさんの人に読んでほしいと思います。凄惨な物語を、たまにユーモラスな表現を交えて読ませてくれます。
それなのに、戦争のむなしさ、愚かさ、怒り、悲しみ……、それらすべてが伝わってきます。中でも、『総員玉砕せよ!』は、戦記物の中で最高傑作だと思います。
水木せんせいのファンだからというわけではなく、お世辞ぬきに素晴らしいです。
実際に戦争で片腕を失うほどの前線にいらっしゃった水木せんせいですから、セリフ1つとっても、とても説得力があります。
『総員玉砕せよ!』では、必ず生きて日本に戻るんだ、と心に誓う青年将校が、結局玉砕の指令にしたがい、命を落としてしまいます。嫌になるくらいバッドエンドですが、それが戦争。ハッピーエンドはあり得ないんです。

ヤモリビトpoints!

総員玉砕せよ!

ラストシーンです。
玉砕指令が下った主人公たちが、全員南方に散った場面です。このナレーションが、とても虚しく、そして悲しいです。
「そこまでして守らなければならぬ場所だったのだろうか」
戦争ってこの一行です。
戦場に散っていく彼らのことを考えると、本当に胸が押しつぶされそうになります。でも、それが現実だったわけです。決してフィクションではないのです。
過去を洗い流すことはできません。だから、せめて、彼らの死に意味を持たせなければならないのです。
水木せんせいの怒りと悲しみが、痛いほど伝わるラストシーンでした。


初版:1980年8月
出版社: オハヨー出版

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