
貸本時代ロマン(上)

「忍者無芸帳」、「忍者は一度勝負する」、「ハト」、「ろくでなし」、「忍法屁話」、「ライバル]
、「完成交響楽」、「空の財布」、「金太とピン子」、「狸のポン太」の短編10話が収録されています。
すべて「忍法秘話」に掲載されたものです。「忍法秘話」は、白土三平氏を代表とする、当時人気の高かった忍者もの漫画を集めた今でいう雑誌みたいなものです。
水木せんせいの書く忍者漫画は、シリアスに描く白土先生とは逆に、かなりコミカルでシニカルです。どうやら、白土先生の作品をパロってるのも見受けられます。
でも、どの作品も水木せんせいらしくて、かなりイイ仕上がりです。貸本という完全に読者層が決められていない中で、自由に書いていたのかな、と勝手に思ってみたりします。
ヤモリビトpoints!

「忍者無芸帳」のラストシーン。
忍者になりたい少年が、ねずみ男に騙されてすべてを奪い去られてしまうところです。
「現実ってなんてキビシイんだろう」と、とぼとぼ歩き始める少年のコマで鳴いているセミが、何とも言えず味わい深いです。
このお話は、ねずみ男がはじめて登場する話でもあり、ねずみ男の話術と人を騙す勢いっていうのが、もの凄く伝わってきます。これは、本当に必見です。
初版:1999年3月20日
出版社: 太田出版
